平成24年2月16日
文責 高橋
Ⅰ 前言
希望ケ丘高校剣道部で行っている「木刀による剣道基本技稽古法(希望ケ丘高校版)」を、制定した剣道部顧問 今里学先生の了承を得て紹介する。
これは、今里学先生が生徒の技の稽古用に「木刀による剣道基本技稽古法」をベースにして、高校生が使う技のほとんどを取り入れたもので、形の稽古がそのまま防具を着けた稽古や試合に生かされるものとなっている。
日本剣道形及び「木刀による剣道基本技稽古法」の趣旨である、剣理を代表する基本的な形から千変万化して、あらゆる技を生み出すことの具体策が、ここに紹介する「木刀による剣道基本技稽古法(希望ケ丘高校版)」である。平成22年7月に制定された。
Ⅱ 「木刀による剣道基本技稽古法(希望ケ丘高校版)」
○一本目 「攻め合い」
①上から ②表から ③裏から ④払い ⑤巻き
○二本目 「一本打ちの技」
① 面 ②小手 ③胴 ④突き(表)⑤ 突き(裏)⑥ 逆胴
○三本目 「連続技」
①小手―面 ②小手―胴 ③突き一面 ④面一面 ⑤面一小手 ⑥担いで面
○四本目 「払い技」
① 払い面 ②払い小手 ③上から乗つて面 ④巻いて面 ⑤表をとって小手
⑥裏をとつて面
○五本目 「引き技」
①引き胴 ②引き面 ③引き小手 ④担ぎ面
○六本目 「抜き技」
① 面抜き胴 ②小手抜き面 ③面抜き面 ④面あまし小手
○七本目 「すり上げ技」
① 小手すり上げ面 ②面すり上げ面(表)③ 面すり上げ面(裏)
突きすり上げ面
○八本目 「出ばな技」
①出ばな小手②出ばな面
○九本目 「返し技」
① 面返し胴 ②小手返し面 ③面返し面
○十本目 「打ち落とし技」
①胴打ち落とし面②小手打ち落とし面
Ⅲ 基本技の構成及び練習方法
1 一本目から十本目までの技の構成
(1)1本目に「攻め合い」を新たに設け、以下、「木刀による剣道基本技稽古法」に沿って技を構成している。攻め合いでは、下からの攻めもあるが、高校生の場合、下から攻めようとすると、上から乗られる恐れが強いので、ここでは技として採り入れていない。
(2)二本目の逆胴は高校生として不慣れな技であるので練習させた。
(3)担いで面を連続技として採り入れた。
(4)四本目の払い技では、巻いて面や上に乗っての技も採り入れた。
(5)六本目の抜き技では、面抜き面はかなり高度な技。面あまし小手は試合でよく見かける技。
2 練習方法
技の感覚が身に着くまで、初めのうちは木刀を持って、受け手と掛かり手となり、すり足で技の基本を覚える。要領は、「木刀による剣道基本技稽古法」と同じである。
木刀で基本を習得した後、防具を着用し、竹刀をもって打突がスムースに出せるように練習する。
最終的には、基本技を実戦的に練習する。立ち会った相手との距離によっては、その場の打ちになったり、引き技になったりすることがある。
Ⅳ 各技ごとの練習要領
1 「攻め合い」
①上から ②表から ③裏から ④払い ⑤巻き
(1)表(裏)からの攻めは、半歩右(左)に踏み出して攻める。払いと巻きは一歩踏み出しながら行う。
(2)払いは、表の斜め下からの払いを基本として練習するが、相手の構えの竹刀の高さに応じて、斜め上からの払いも練習する。表ができたら裏からの払いを練習する。
(3)巻きは下から竹刀の裏につけて、相手の竹刀を斜め下に巻き落とす。
(4)下からの攻めもあるが、高校生クラスだと面に乗られる恐れがあるのでやらせないとのこと。
2 「1本打ちの技」
① 面 ②小手 ③胴 ④突き(表)⑤ 突き(裏)⑥ 逆胴
(1)逆胴は3挙動に分けて行う。①一歩攻めながら踏み出す。②更に一歩踏み込んで大きく振り上げてから逆胴を打つ。③体を左斜め後方に引きながら、胴を手前に引くように切る。
(2)防具を着けての練習では、はじめに分けて行った②③の動作を連続して練習してから、立ち会い間合いから連続した動作で逆胴を練習する。しっかりと腰を回して打つようにする。
3 「連続技」
①小手―面 ②小手―胴 ③突き一面 ④面一面 ⑤面一小手 ⑥担いで面
(1)突き一面は、突きに対して安全のため、受け手は一歩後退する。掛かり手は突きの動作を正しく行う。防具を着けての練習では、突きを正しく突いて行わせる。
(2)面一面は1本目の面が引かれて外されたので、すかさず2本目の面を打つ感覚。受け手は一本目の面を引いてあますようにする。
(3)面一小手は、誘いの面を打って、相手の小手が上がったところを打つ。
(4)担いで面は、担ぐ時に中途半端だと小手を打たれることを理解させる。
(5)防具を着けての練習で共通する注意事項は、左足の引付である。踏み込みと左足の引付をしっかりとさせる。
4「払い技」
① 払い面 ②払い小手 ③上から乗って面 ④巻いて面 ⑤表をとって小手
⑥裏をとつて面
(1)払い小手は裏から払う。
(2)握りが難く押すと反発してくる相手には、表(裏)を取ってから裏(表)を打つようにする。
(3)巻いて面は、小さく下に巻き落とす。
(4)防具を着けての練習で上から乗って面を打つ時に、相手の手元近くまで乗りきって、面を打つことで出ばなの小手を防ぐことができる。
5 「引き技」
①引き胴 ②引き面 ③引き小手 ④担ぎ面
(1)基本は打突部位を押し開けて引き技を出す。つばぜり合いで相手の反発が強い時には、逆に押して、相手が反発して開いた所を打つようにする。
6 「抜き技」
① 面抜き胴 ②小手抜き面 ③面抜き面 ④面あまし小手
(1)小手抜き面は、上に抜くのではなく、日本剣道形2本目と同じ抜き方をして面を打つ。
(2)面抜き面は、面に対して体を右に開いて相手の面を外し、こちらは正対して、斜めの打ちにならないように、上から正しく面を打つ。
(3)面あまし小手は、面に対して左後方に一歩引いてあまし、伸びきった相手の小手を打つ。
(4)小手抜き面で、防具を着けて練習する時に、抜いた後相手との距離によっては、その場で打つか、引き面となる。小手で上に抜くやり方もあるが、技量が上がってくると小手を打たれる危険性が上がってくる。
7 「すり上げ技」
① 小手すり上げ面 ②面すり上げ面(表)③ 面すり上げ面(裏)④突きすり上げ面
(1)すり上げ技は相手の刃筋を少しだけ外す技。すり上げ方は、裏表ともに両手首を外側に返して小さく半円を描きながら振り上げ、相手の刃筋を外し、自分はそのまま刃筋を真っ直ぐにして面を打つ。打ちは1挙動になる。前で捌くとすり上げやすい。払いは2挙動になるので、そうならないように注意する。
(2)指導をする時に、すり上げと払いでは音が異なることを理解させて、正しくすり上げているかどうかを、各人で判断させる。
8 「出ばな技」
①出ばな小手②出ばな面
(1)技の起りを捉えて打つのではなく、技を起こさせる攻めを指導する。
9 「返し技」
①面返し胴 ②小手返し面 ③面返し面
(1)防具を着けての練習では、返し面は相手との距離によって前・その場・引き面となる。
10 「打ち落とし技」
①胴打ち落とし面②小手打ち落とし面
(1)胴打ち落としより、小手打ち落とし面が多く使われている。右斜め下に打ち落とすと小手を打たれにくくなる。防具を着けての練習では、その場での面か引き面がやりやすくなる。
Ⅴ 終わりに
第Ⅱ項の「木刀による剣道基本技稽古法(希望ケ丘高校版)」の内容の他は、私が稽古を見て聞いて感じた事を述べたものである。自分自身で消化不良な所が多々あって、今里先生の狙いとは違って書いているところがあるかもしれない。しかし、それはまたそれで味わいがあろう。各人で実際にここに書かれている技を使ってみて、技のポイントを修正して欲しい。実践してみて、(希望ケ丘高校版)は子供の指導に役立つだけではなく、大人の技の稽古にも有効である。