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兵法家伝書を読む(Ⅵ)

投稿日:2010年1月18日 更新日:

無刀之巻
22.1.16
文責 髙橋
1 無刀之巻の概要
 宗矩の父石舟斎宗厳が、上泉伊勢守の開示した太刀の間合を基にして、無刀取りを工夫考案した。無刀とは相手の刀を取ることを本意とすることではなく、刀を持たない時でも人に斬られないようにすることを第1の心得とするものである。だいぶ文章は省略したが、意は通じるものと思う。

2 無刀の巻の内容
(1)項目
ア 無刀の心得
イ 秘事
ウ 大機大用(だいきだいゆう) 自由自在の働き
エ 心法 兵法も禅も心を残し留めることを嫌う

(2)内容の要点
ア 無刀の心得
無刀とは必ずしも相手の刀を取ろうとするものではない。自分の刀が無い時に、人に斬られないようにすることが無刀である。まして見せ物の芸や名誉などでもない。
斬られないことが勝ちである。刀を取られまいとして逃げている者から、あえて刀を取る必要もない。
無刀の心得とは、刀を持たない時に周りの諸道具を使って勝つことである。扇でも、杖でも、奪った相手の刀でも良い。
イ 秘事
相手が斬りかかってくる時に、斬られない間合を理解しておく事が大切である。斬られない間合であれば怖れることはない。斬られる間合で斬りかかってきた時に、刀を取るようにする。即ち「斬られて取るべし」である。
無刀は相手の長い刀と我が短い手を道具として立会うと考え、間を詰めて相手に斬らせ、その刀の柄の下になり、開いて太刀を押さえる工夫である。身を寄せなければ取ることはできない。斬られるように仕掛けることが大事である。特に相手の手を上げさせる工夫が重要である。
無刀の極意として3箇の大事(無刀勢、手刀勢、無手勢)がある。秘事であり説明はないが、文字から想像することができる。無刀勢とは刀を持たない状況で、周りの諸道具を用いること。手刀勢とは道具を用いないで、手を刀と見立てて行うこと。無手勢とは手も構えないで、相手を圧迫して行うことではないだろうか。
無刀は当流専一の秘事であって、今まで述べてきた身構え、太刀構え、場の位、遠近、うごき、はたらき、つけ、かけ、表裏などことごとくが無刀の工夫より出ている。これ肝要の眼である。
ウ 大機大用(だいきだいゆう) 自由自在の働き
禅語に「大機大用、疾きこと風の如し」の言葉がある。機は心のはたらき、用はそのはたらきが動作になって現れるこという。大機大用とは、自由自在に身をはたらかして、なすこと何事も道理に適うことをいう。兵法においては、身構え、太刀、手足など様々な働きが習いの外に自由を得ることを大用という。そして、常々身体内に機を具していないと、とっさの時の大用は現れ出ない。行住坐臥、常々注意を怠らなければ、いざというときに速やかに対応が出来るものである。
いずれの道も、工夫を重ね功が積み重ねられなければ、機が熟して来ない。熟さなければ大用の発露はない。まして機が固まっていては、用など出てこない。
兵法では、習ったことだけを使う人は、大機大用の人と立ち会うと手も足も出ない。にらまれたならば、その目に心が止まり、不自由となる。功を積み機が熟したならば、自在の働きが出てくる。
「心(しん)は万境(ばんきょう)に随(したが)って転ず、転処(てんじょ)実(じつ)に能く幽(ゆう)なり」(自由を得た人は、その時の状況や変化に素直に対応する。その対応が実に理に適っていて美事である。)の禅語は、兵法においても肝要である。
エ 心法 兵法も禅も心を残し留めることを嫌う
兵法も仏法も殊更着(じゃく)を嫌う。とどまらないことが肝要なのだ。正しい道を得たとしても、それさえも捨てきって、虚心で所作をなす、この位に至らなければ名人とは言えない。囚われている間は、修行は未だ初歩の段階である。

3 所見
無刀で書かれていることは、兵法家伝書ではじめに読んだ、三个(さんか)初学の門の「敵をきるにあらず、敵にきられぬようにすべし」と書かれていたことと、軌を一にする。この書はまさに一貫性がある。
この巻を初めて読んだ人は、「無刀とは相手の刀を奪う技」と考えていたと思う。「無刀とは必ずしも相手の刀を取ろうとするものではない。自分の刀が無い時に、人に斬られないようにすることが無刀である」には驚かされる。
宗矩は、無刀之巻を含めここに至るまで、禅語を多く引用して剣の神髄を少しでも伝えようと工夫しているが、なじみの少ない私達には返って読みにくくしているきらいがある。しかし、心を文字にするには必要な手段であったと思う。味わいながら神髄を掴んで欲しい。
無刀之巻まで読んでから、またはじめに戻って読み直すと、色々な発見が有ると思う。是非読み直して欲しい。
「剣を習うは、心を習うこと」の通り、高段者の人の剣道には心が見られる。私も技と心の両面を磨いていきたいと思う。以上で兵法家伝書を読了する。

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