文責 髙橋
小林会長の挨拶の後、網代先生の講義と代表者(サンプル)による実技を通じた指導があり、その後、四組に分かれて審判法の錬成が行われた。網代先生、椎名先生、根岸先生、田島先生がそれぞれの組を担当して行った。
私は、たまたまサンプルに指定され、皆の前で最初に指導を受けることになった。有効打突の判断が難しく、30分に亘る指導は良い勉強になった。その後の指導もあわせ、私にとって目から鱗の事柄も多く、勿体ないので思いつくままに記事とした。
◎小林先生の挨拶
全日本選手権大会の所見と是からの剣道の在り方。
今回の試合は守りが中心で攻めが少ないため、延長戦が多い。上段を取る選手が増えたが、手数だけの上段が多い。我慢の攻防が無くなって、印象に残る試合が少ない。寺本選手のような試合は見応えが合ったので、自然と拍手が涌く。
初心者が最初に習う正面打ちは、8段も初級者も求めるところは同じ。
正代選手の上段の解説など。
◎網代先生の講義
規則、細則改正の説明と文化継承の意義。
各種競技の中で判定が最も難しいのが剣道。行き着く先は有効打突の判定。
審判の絶対性と責任、修練など。
◎実技指導
○有効打突の判断
・追い込んでの打突は、よりしっかりした打ち方でなければならない。勢いだけで有効打突に仕舞いがちになる。
・抜き技や摺り上げ技など、軽妙な技は強くなくても有効打突と判断する。ついつい軽いとして採らない傾向がある。
・面を打った時に横にこすれるのは打突部位を打っていない。
・面打ちに対して、胴を突いた竹刀がこすれて外れるのは、正面を制していないと判断し、面の打ちが十分であれば有効とする。
・引き胴で左腰が開いているのは平打ちになっている。
・当てに行った打突は、当たっても有効ではない。
・当たった部位と発声が異なるのは有効ではない。
・二刀に対する小手は右・左共に有効である。
・二刀の小太刀による有効打突はある。太刀で相手の太刀を制して、小太刀で腕を伸ばして打突すると有効。鍔迫り合いで相手の太刀を押さえての小太刀の打突は、押さえであって制していることではない。
・面を打った後に倒れた時の有効打突かどうかの判断は、相手か一本になるのを防ごうとして暴力的に倒したものか、自分の足腰の構えが悪くて不安定となり倒れたものかで行う。
・引き技で振りかぶらないで打った技は、単に当てに行った技と判断する。
・片手打ちで行う返し胴は、相手との間合が近すぎたからで、打突部で打っていないただ当てただけの打ち。
・腕に力が入ったままの打ちは、手の内の冴えが無く、有効になりにくい。(有効打突の要件を満たしていても、1本にならない例)
・残心は、打った瞬間が残心で、その後は残心の継続である。
・逆胴を人によっては採らない傾向があるが、これも打突部位である。
○審判の動作
・入・退場時は足を合わせるなど審判同士の調整が必要。
・初めに副審が定位に移動する時は開始線の内側を通る。
・旗を開くのは三人同時に行う。
・開始線、境界線、中心、目印、名札と正しい名称を用いる。
・審判の位置取りは主審の動きで決まる。
・選手が最初の立ちあいの線と直角の向きで試合をしている時は、副審一人を頂点として、主審は底辺の一角を占めるように位置取りすると主審が対応しやすい。(3人が同じ考えにならないと難しい。)
・位置取りの移動は最短コースを取る。
・判定した後に選手から目を離してはならない。錯誤の怖れもある。(失敗した多くの実例)
・危険と判断したら副審でも直ちに「止め」と宣告して両手を挙げ旗の表示をする。表示だけでは試合は続行されている。
・倒れたり、膝を着いたりした後に、直ちに立ち上がって相手に対することができたら試合を中断することなく続行させる。
・上段の試合に対する位置取りは突きや小手が見えるように位置する。
・審判は、選手の動きの癖を早くつかみ、選手よりも先に位置取りを済ませ、余裕を持って審判するのが上手。
・選手の打突を後追いして、判定するのではなく、選手の動きから攻防を予測し、判定をする。この際、最後まで見届けてから判定をする様にし、反射的な判定にならないように留意する。
○おわりに
身近な人では鈴木先生、郡先生、阿部先生や瀬戸先生、宮原先生も参加されたので、何かの機会に話を聞かせて貰うとよい。講習会は、過去の色々な実例による解りやすい解説があり、毎回目から鱗が落ちる思いである。大池の4段・5段の若い人達も参加すると良い勉強になると思う。